いろんなところで”事件”が起きる野球というスポーツ
数ある”ボールを使ったスポーツ・競技”がある中で、野球ほど「直接ボールを使っていないところでプレーが起こるスポーツ」というのは、他に類を見ません。
そのため、スコアを付けるスコアラーも、バッターボックスだけを注視していればいいというわけではなく、常にいろんな箇所に目を配っておかなければ、記録に必要なプレーを見逃してしまう恐れがあります。
スコアを付けるのは、それほど大変な作業でもあるのですが、一つ一つルールを紐解くことで、極めて合理的な記載の仕方がすでに体系化されているのも、野球のスコアブックの魅力と言えるでしょう。
そうしたルールに即したプレーの中でも、特にバッターボックス以外の場所で起きる、「走者による進塁」にまつわるスコアの記載の仕方を解説してみます。
特に複雑な「盗塁」や「牽制」に絡むプレー
一口に「走者の進塁」といっても、それに関わるプレーは数多く存在します。
まずなんといっても盗塁ですが、「成功/失敗」はもちろんのこと、牽制による「牽制刺」も加わって来ると、実にさまざまなシチュエーションが発生します。具体例と共に、一つ一つ解説していきますね。
- 盗塁の成功と失敗(盗塁刺)
盗塁が行わた場合、スコア上では盗塁を行った際の走者の欄にそれぞれの状況に合わせて、
成功=✓S(Steal – スチールの略)
失敗=✓CS(Caught Stealing – 盗塁刺の略)+ アウトカウント1
をそれぞれ書き入れます。先頭の「✓(チェック)」は、盗塁に関するシチュエーションが起きた場合の投球の脇に、分かり易くマークをつけて照らし合わせるのがセオリーです。
また、特に盗塁刺の場合には、イニングスコアとは別に投球を行った捕手には「捕殺」、実際に塁上でタッチプレーを行った野手に対して「刺殺」の記録を、それぞれつけるのを忘れないようにしましょう。※シーズン終了時の査定に響きます(笑) 。
- 牽制刺
盗塁を試みようとした走者の動きを察知して、投球前の投手や投球後の捕手が素早く塁上へとボールを転送して、帰塁する前の走者をタッチアウトにした場合には、
牽制刺=✓PKもしくは✓PO(Picked Off)+送球・捕球の野手
を記載します。また、「PO」の記号を単純に「ケ」と書くケースもあります。これは、アマチュア野球の場合であればスコアラーは監督やチームと相談の上で、いずれにするかの記載ルールを事前に取り決めておくとよいでしょう。
またこの場合も、ボールを転送した投手および捕手には「捕殺」、塁上で実際にタッチアウトにした野手には「刺殺」を記録としてつけます。
ただ、面白いのはいくら牽制球を投げてもアウトにならなかった場合には、スコアの記録上では何の記載も必要ないのがセオリーです。とはいえ、牽制する側も一生懸命のプレーなわけですから、どこかに小さくでも記載を加えておくのでもいいと思います。※特に、投手の肩は消耗品です。
「執拗な牽制にも関わらず、盗塁を成功させた or 牽制刺を行った」といったシチュエーションを、後でスコアを参照する際に想起できるメリットもあります。
挟殺(挟撃)プレーが行われた場合はどうなる?
それでは、飛び出した塁上の走者に牽制球を投げたものの、その時点でアウトにはできず、走者と野手による追いかけっこの挟み撃ちのような恰好になるプレーが行われる場合はどうでしょうか。いわゆる”ランダウンプレー”とも呼ばれる「挟殺(挟撃)プレー」ですが、この場合のスコア上の記載の仕方についです。
実は、難しく考えすに極めて単純に、
アウトになるまでボールが転送された野手を順番に記載する
のが記録上のセオリーとなっています。例えば、投手から一塁手へと転送された牽制球で飛びした走者が挟まれ、一塁手が二塁手へ、再び走者を追った二塁手がベースカバーに入った捕手へと転送し、その時点でタッチアウトとなった場合には、
‘PO – 1.3.4-2
のようにスコアには記載します。また、この場合であれば最終的にボールを転送した二塁手に「捕殺」を、走者に直接タッチしてアウトにした捕手に「刺殺」を、それぞれ記録します。

- 【記載例】四球により出塁した2番打者が3番打者の初球に二塁への「盗塁」に成功。その後、4番打者への投球前に塁上から飛び出したのを牽制され、二・三塁間に挟まれ、セカンド → サード → ショートと渡って「牽制刺」によるタッチアウトになった場合の記載例。なお、同一イニングで走者に関するプレーが行われた場合は、都度「✓」を記載する数を増やして照らし合わせる。
”トリックプレー”で挟殺プレー中に三塁走者が生還!?
なお、走者が一・三塁といったシチュエーションの際に、わざと一塁走者が飛び出したと見せかけて野手陣を誘い出し、隙をついて三塁走者が本塁を狙って生還を果たすといった、いわゆる「トリックプレー(もしくはディレイドダブルスチール)」が行われることが、わりとよくありますね。
挟殺プレーは、タイムプレーとして行われるため、挟殺プレー中の走者が例えアウトになってスリーアウトとなったとしても、その前に三塁走者がホームインしていた場合には得点が認められるため、プロ野球の試合でもこうしたテクニックを駆使したトリックプレーがたまに見られます。
参照:【牽制誘い…】水野達稀『挟殺プレーの間に…“これ以上ないタイミングでスタート”→本塁生還!』2024年5月15日 北海道日本ハムファイターズ 🆚 埼玉西武ライオンズ 戦
こういった場合もスコアラーとしては慌てずに、対象となる走者の欄に、ボールが転送された野手の順番に記載した上で、整理することで解決できます。
ただ、こうしたプレーの際にとても複雑なのが、挟殺プレーをしたものの走者をアウトにできずに、次塁への進塁を許してしまった場合に、はたして記録上の「盗塁」はつくのか、という点でしょう。
挟殺プレーでアウトにならずに進塁した場合は「盗塁」がつく?
結論から言えば、この場合は公認野球規則により、挟殺プレーにも関わらず次塁への進塁を果たした走者には「盗塁」を記録することが定められています。
公認野球規則 9.07(c)
盗塁を企てた走者や塁を追い出された走者が挟殺されるプレーの間に、失策の記録されない守備側の不手際で次塁に進み、そのプレー中に他の走者も進塁した場合 その走者にも盗塁を記録する
ただし、野手側の挟殺プレーの際に、落球や暴投などの「失策」があって進塁を許した場合であれば、その場合は「盗塁」とは認められず、単に「野手による失策による進塁」となることも、同様に規定されています。
公認野球規則 9.07(d)
重盗・三重盗の際に、ある走者が送球でアウトになった(または、本来アウトのプレーを失策でセーフになった)場合、どの走者にも盗塁は記録されない
そのため、スコア上に記録する際には、
- 挟殺プレー中に野手側の失策以外で、アウトにならずに進塁した走者には「盗塁」を記録する
→ 逃げ切ったプレーを賞賛する意味合いも込めて(👏)- トリックプレー(ディレイドダブルスチール)の際は、いずれの走者もセーフであった場合にのみ「盗塁」を記録する
といった認識と判断で間違いはないことも、覚えておくとよいでしょう。
