【徹底解説】最下位チームの“防壁”は背番号30 ― 新人王 ヤクルト・荘司宏太 “止まって見える球”でセ界を凍らせた1年

1. 2025年シーズン成績と「飛躍の真相」

荘司宏太(24)は、ルーキーイヤーにして東京ヤクルトスワローズのブルペンを“最優秀新人”級から“リーグ屈指”へ引き上げた左腕でした。

  • 45試合登板 2勝1敗 28ホールド(HP30) 防御率1.05
  • 投球回42回2/3、被安打19、被本塁打1、与四死球19(四球17、死球2)、奪三振53
  • 被打率.138、K/9=11.18、WHIP=0.84

セ・リーグ最下位に沈んだチーム(57勝79敗7分、勝率.419)でありながら、失点はわずか5。チーム防御率3.59の中で1.05という数字は、完全に“別世界”の投手だったと言っていいでしょう。

「チェンジアップは球界一?」打者を凍らせた決め球

オープン戦から注目を集めたのは、ストレートとチェンジアップの“エグい”球速差

  • ストレート平均:144.7km/h
  • チェンジアップ平均:119.1km/h
  • その差 25.6km/h
  • チェンジアップ空振り率:27.6%
  • 全投球の中でチェンジアップ比率:35.8%(カウント球にも決め球にも使う主力球)

同じ左腕の大竹耕太郎、山﨑福也らと比べても球速差はトップクラス。しかも腕の振りはストレートと完全に同じ。打者からすると「ストレートだと思ったら来ない」「チェンジアップを待ったらストレートが食い込む」という、地獄の二択を強いられる配球でした。

デビューからの無失点行進と“ピンチこそ笑う”メンタル

3月29日のプロ初登板は、東京ドームでの巨人戦。0-12と大敗ムードの中で4番手としてマウンドに上がり、ランナーを背負いながらも1回無失点。ここから荘司の「止血役」としての物語がスタートします。

その後、4月末までにプロ初登板から10試合連続無失点。4月30日のDeNA戦(神宮)では、3-1の8回に登板し、無死一二塁から度会・牧に連打を許して最大級のピンチを招きながら、

  • 佐野をライトフライ
  • 宮﨑を見逃し三振
  • 京田に死球で満塁
  • 最後は山本をレフトフライ

という“出塁上等・失点拒否”の粘投で切り抜け、緊迫した試合を守り切りました。

本人も「緊迫した場面で打者との対決を楽しむのをモットーにしている」と語るように、ピンチでギアを上げるタイプ。いわゆる“ビビらない新人”だったことが、そのまま数字に出たシーズンだったと言えます。

対戦チーム別・月別に見る「安定感の怪物」

対戦別成績を見ると、特に目立つのが阪神・広島キラーぶりです。

  • 阪神戦:11試合 11回 4被安打 0被本塁打 15奪三振 防御率0.00 被打率.118 WHIP0.73
  • 広島戦:8試合 7回 2被安打 防御率0.00 被打率.095 WHIP0.57

月別では、交流戦中の6月こそ2.25とやや数字を落としたものの、

  • 3月:0.00(2試合)
  • 4月:0.00(8試合)
  • 7月:1.04(9試合)
  • 8月:2.61(11試合/被本塁打1の“唯一の失点期”)
  • 9月:0.00(9試合)

と、夏場もほぼ落ちないスタミナと修正力を見せました。

チームへの影響

ヤクルトは最終順位こそ最下位でしたが、

  • 「リードして7回を迎えれば荘司→星」という勝ちパターンが機能した試合では、終盤の逆転負けが明らかに減少
  • 阪神や広島など上位打線相手に“ゼロ”でつなぐことで、打線の終盤逆転の土台を何度も作りました。

特に、阪神に対して11回無失点というのは、優勝チームへの“見えないダメージ”にもなっており、最下位チームにいながら優勝争いのバランスを変えたリリーバーと言ってもいいインパクトでした。

2. 新人王争い:最大のライバルは誰だったか?

2025年セ・リーグ新人王レースは、シーズン中盤からずっとこう呼ばれていました。
「伊原陵人(阪神)vs 荘司宏太(ヤクルト)」

ライバル:阪神タイガース・伊原陵人投手

  • 阪神ドラフト1位の右腕
  • 先発でシーズン序盤に5勝、9月時点で5勝7敗、防御率2.34、104回投球とローテを支える存在に。
  • カットボール、スライダー、チェンジアップを駆使し、先発と中継ぎの両方で結果を残した“マルチロール型”ルーキー。

それでも荘司が上回ったポイント

  1. 「圧倒的な安定感」+「役割の明確さ」
    • 荘司:防御率1.05・45試合・28H・K/9 11.18、WHIP0.84
    • 新人王を取った近年のリリーフ(巨人・船迫など)と比べても、投球回・ホールド・奪三振で上回る水準と評価されました。
    • シーズン通して“勝ちパターン”だけを任され続けたことも、票を集めた大きな理由です。
  2. チーム事情込みの“価値”の大きさ
    • 阪神は先発陣が厚く、伊原が多少落ちても他の投手でカバーできる布陣。
    • 一方のヤクルトは、前年までブルペン防御率がリーグワーストクラスの“致命的弱点”で、そこに荘司が加わったことで接戦のゲームプランそのものが変わった、という見方が強くありました。
  3. 終盤の“失速” vs “加速”
    • 伊原は前半戦の先発で数字を稼いだものの、終盤は中継ぎ転向や援護不足もあり、勝ち星を積み上げきれず。
    • 荘司は7月以降だけで30試合・26回2/3、防御率1.35・24HPと、シーズン終盤にむしろ存在感を増していった

この「前半・伊原、後半・荘司」という流れの中で、最終盤の印象と数字を両方勝ち切ったのが荘司でした。NPB AWARDS 2025の発表では、セ・リーグ新人王に荘司、パ・リーグ新人王にロッテ・西川史礁が選出されています。

3. 来季への活かしどころと課題

活かせる強み

  1. チェンジアップ+ストレートの二軸
    • 球速差25km/h超+同じ腕の振りという“反則級コンボ”は、来季もリーグトップクラス。
    • 特に阪神・広島には完全に“荘司対策が間に合わないままシーズンが終わった”印象で、来季もそのアドバンテージは継続します。
  2. ピンチでの冷静さとメンタル
    • 4月30日DeNA戦や、9月22日阪神戦での終盤登板など、プレッシャーがかかるほどゾーンに攻め込めるタイプであることは、1年目で証明済み。
  3. イニング管理と登板過多への耐性
    • 45試合登板ながら、月別成績は9月までほぼ落ちず。
    • 8月に少し防御率を落としたものの被弾は1本のみで、その後すぐに9月0.00で締めた“修正力”は大きな武器です。

克服したい課題

  1. 与四球の多さと“カウント負け”の削減
    • 四球17+死球2で、与四死球は19。
    • K/BB=3.12と決して悪くはありませんが、球威がある分、もっとストライクゾーンで勝負しても良いタイプ。
    • 特に右打者のインコースを攻め切る勇気とコントロールを磨けば、「1点台前半→1点台前半維持」から「0点台」も現実的な領域になってきます。
  2. 左打者への配球バリエーション
    • 決め球がチェンジアップに偏ると、同一カードの中で“見られた”後に対応される危険も。
    • スライダーやカーブ、あるいはカット系の球をどこまで精度高く混ぜられるかが、2年目以降の伸びしろです。
  3. 連投&ビハインド時の“スイッチ”
    • 今年は基本的にリード時の登板が中心。
    • 来季もしクローザー転向や、ビハインドでも流れを止める役割を担うなら、「点差・局面でギアを切り替える投球術」が必要になってきます。

来季どれくらい活躍しそうか?

球団関係者や識者の評価では、早くも「来季はクローザー候補」「将来的なセーブ王候補」という声が上がっています。スポニチのNPB AWARDS報道でも、荘司本人が「来季はセーブ王を獲りたい」と意欲を見せたとされています。

  • もし来季もセットアッパー起用なら
    50試合前後登板、防御率1点台前半、30ホールド前後は十分に射程圏内。
  • クローザー転向なら
    → 30セーブ級の成績も現実的。むしろ「新人王の次はタイトルホルダー」を期待されるフェーズに入ったと言って良さそうです。

4. 技術が際立った2025年登板5選

① 3月29日 vs 巨人(東京ドーム)

  • 試合結果:巨人 12 − 0 ヤクルト
  • 荘司:4番手として1回無失点(被安打1、奪三振2)

大敗試合の中で、唯一と言っていい“収穫”がこのルーキー左腕でした。
ランナーを背負いながらも、ストレートとチェンジアップで巨人打線を翻弄。スコア的には消化イニングですが、「大きな舞台でも力まない」という印象を記者陣に強く残した1回でした。

② 4月9日 vs 阪神(甲子園)※下記、動画あり

  • 試合結果:ヤクルト勝利(5-3)※戦評より
  • 荘司:1回を三者連続空振り三振でプロ初ホールド

5-3の2点リードで迎えた7回、甲子園の大歓声をものともしない投球。
小幡、渡邉、近本と、タイプの違う打者3人をすべてチェンジアップ主体の配球で空振り三振

  • チェンジアップの空振り率27.6%
  • K/9=16.2(シーズン序盤時点でリーグ4位、5イニング以上では実質トップ)
    と紹介され、「球界屈指のチェンジアップ」とまで評されました。

③ 4月30日 vs DeNA(神宮)

  • 試合結果:ヤクルト 4 − 1 DeNA
  • 荘司:8回に登板、無死一二塁から無失点で切り抜け、デビューから10試合連続無失点

3-1の8回に登板し、度会・牧の連打でいきなり無死一二塁。そこから

  • 佐野:ライトフライ(高めのストレートで詰まらせる)
  • 宮﨑:外角チェンジアップで見逃し三振
  • 京田:死球で二死満塁
  • 山本:外野フライで切り抜け

という内容。メンタルを試される場面で、「逃げないストレート」「決めにいくチェンジアップ」を投げ分け、さらに球団記録に迫る10試合連続無失点に到達。スポニチもコラムで大きく取り上げる“転機の1試合”でした。

④ 6月14日 vs ロッテ(ZOZOマリン・交流戦)

  • 試合結果:ロッテ 0 − 5 ヤクルト
  • 荘司:9回を三者凡退、交流戦初登板で試合を締める(1回3者凡退、1奪三振)

吉村が7回2安打無失点、清水が8回を無失点とつなぎ、9回にマウンドに上がったのが荘司
敵地ZOZOマリン、ビジターの完封勝利を締める場面で、

  • ストレートでカウントを作り
  • チェンジアップで空振りを奪い
  • 外野フライで淡々と試合終了

“勝ちパターンのラストピース”として、「点差に関係なくゼロで終わらせる」能力を証明した試合でした。

⑤ 7月26日 vs 中日(神宮)

  • 試合結果:ヤクルト 2 − 1 中日(神宮)
  • 荘司:接戦の中で無失点リリーフ、プロ初勝利を挙げる

1点を追う展開から終盤に逆転し、チームは今季初の5連勝。その裏で、リリーフ陣の柱として中日打線をゼロに抑え続けたのが荘司でした。ニッカンスポーツは「逆転勝ちで今季初5連勝、ドラ3荘司宏太プロ初勝利」と報じ、

「中村が初勝利したんで、自分も」

と語る荘司のコメントを紹介。ブルペンの一員から“勝利投手”という目立つポジションへ、ステージが一段上がった夜でもありました。

参照:【ハイライト】2025/4/9(水)阪神vsヤクルト(甲子園)

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