1. 現役通算で見る“活躍できた理由”
(1) 数字で見る打撃力
通算成績(2025年終了時):
- 試合:1651
- 打席:5962
- 安打:1512
- 本塁打:163
- 打率:.280
- 出塁率:.342
- 長打率:.426
つまり、
「.280前後の打率に、2桁本塁打とそこそこの四球が毎年乗ってくる“安定型中距離打者”」
というタイプです。
2011〜2013年の全盛期には:
- 2011年:打率 .316、出塁率 .379、首位打者、ベストナイン&ゴールドグラブ賞
- 2012年:打率 .301、出塁率 .382(リーグ2位)、最多安打(坂本とともに173本)、盗塁20(リーグ2位)
と、リーグトップクラスの1番打者でした。
(2) 技術的な特徴
- ヒットゾーンが広い
- ボールゾーン打率がリーグ平均を大きく上回る
→ 甘くないコースもヒットにされるので、投手からすると「ストライクゾーンを絞りづらい」打者。
- ボールゾーン打率がリーグ平均を大きく上回る
- ベースから離れて構えるフォーム
- 大学時代、外角スライダーを空振りしがちだった弱点を、あえてベースから離れて立ち、
「バットが届く球=ストライク、届かない=ボール」と整理して克服したエピソード。
- 大学時代、外角スライダーを空振りしがちだった弱点を、あえてベースから離れて立ち、
- 広角打法
- 内角は踏み込んでレフトへ、外角はライトへ捌く広角打法が持ち味。
- 右打者なのに右投手に強い
- 2012年までの通算で対右打率 .305、対左 .289 と、右投手を苦にしないデータ。
これらをまとめると、
「コース対応力が高く、左右どちらの投手でも“弱点ゾーンが少ない”」
打者だったと言えます。
(3) アプローチ/メンタル面
- 初期は「外スラに手を出す癖」があったが、フォーム変更で克服
- 三振率は通算で約16.7%(997三振/5962打席)と、
「極端に三振が少ないわけではないが、決して多くもない中庸」 - チャンスでの一発(サヨナラ、逆転満塁弾など)の多さから、
メンタル的に大舞台を楽しめるタイプだったのは間違いないところ。
ex. 2011年10月22日サヨナラ満塁本塁打、2013年8月29日阪神戦サヨナラ本塁打など
2. 相手投手から見て「嫌だったポイント」
- コースを突いても簡単にファウルで粘られる
- ボールゾーンでもヒットにできる器用さがある=ギリギリを攻めてもファウルかヒットになる。
- 外角をライト方向に運ぶのが上手い
- 配球のセオリー的には「外角でゴロを打たせたい場面」で、ライト前や右中間に持っていかれる。
- 右ピッチャーの決め球が決まりにくい
- 右打者で右投手に強いタイプなので、スライダー/フォーク頼みの右投手は特にやりづらい。
- 勝負どころでの“印象的な一発”が多い
- 代打逆転サヨナラ満塁弾(2011.10.22)、サヨナラ本塁打(2013.8.29)、
- 逆転満塁弾(2014.9.6)など、打たれるにしても「やられた記憶」が強烈に残る。
要するに、
「コースを突いても、外を攻めても、右投手の決め球も、全部そこそこ対応される。しかも最後にドカンとやられる。」
というタイプなので、対戦投手としては相当やりづらい打者でした。
3. チームへの影響と勝利への貢献
タイトル・実績面
- 新人王(2010年)
- 首位打者(2011年)
- 最多安打(2012年・坂本とともに)
- ベストナイン3回、ゴールデングラブ2回(外野手)
- 巨人の黄金期(2011〜2013年)の主力としてリーグ優勝、日本一に大きく貢献
特に2012年は、
- 1番打者として最多安打&高出塁率
- CS〜日本シリーズまで全試合安打
- 日本シリーズ第2戦で決勝の先頭打者本塁打
という「優勝チームのエンジン」そのものの働きでした。
役割の幅がもたらしたもの
- 1番〜6番まで、ほとんど全ての打順を経験
- 広島時代・復帰後巨人では、代打の切り札としても実績(2020年代打打率 .440 など)。
チームにとっては、
「打順・役割を動かしたいときに、どこに置いてもある程度の成績を計算できる“便利すぎる主力”」
という存在で、監督の戦略の自由度を大きく高めていました。
4. 四球・進塁打・犠飛など「ホームラン以外の貢献」
(1) 通算での出塁と“長野らしさ”
通算:
- 四球:488
- 死球:31
- 犠飛:17
- 犠打:21
- 打席:5962
ざっくり計算すると(打席に対する割合):
- 四球+死球率: 約9%
- 通算打率 .280 に対し、出塁率 .342 → ヒット以外の出塁もきちんとあるタイプ
特に全盛期:
- 2011年:出塁率 .379、四球+死球率 約9.3%
- 2012年:出塁率 .382、四球+死球率 約11.6%
と、「“隙あらば四球を選ぶタイプ”というより、高い打率+そこそこの四球で高OBPを作るタイプ」といえます。
(2) 進塁打や犠飛のイメージ
- 犠飛:通算17本と特別多いわけではないが、ライナー性の打球が多いスイングなので、外野フライでの得点も期待できたタイプ。
- 犠打(バント):通算21とかなり少なく、本人も「犠牲バントを課題に挙げていた」とされている。
つまり、
「細かいバント野球で貢献するタイプではなく、
強い打球で走者を進める/返すタイプの“打って動かす1・3番”」
というスタイルでした。
強みとウィークポイントをまとめると
- 強み
- ヒット+ほどほどの四球で安定した出塁
- 広角に打ち分けるのでチャンスでの進塁打になりやすい
- 二塁打が多く(249本)、長打で一気に得点圏へランナーを進めることができる
- ウィークポイント
- バントは苦手意識があり、数字上も多くない
- キャリア中盤以降はボール球に手を出す傾向が強くなり、2015年には原辰徳監督から視力検査を指示されたというエピソードもある(=ゾーン管理が乱れた時期)
5. 2025年ラストシーズンの位置づけ
成績と役割
NPB公式の通算成績を見ると、2025年は:
- 17試合
- 24打席/22打数
- 3安打
- 打率 .136 / 出塁率 .208 / 長打率 .136(本塁打0)
数字上は完全に「ラストシーズンのベテラン」という形で、成績で引っ張るというより、ベンチやロッカールームでの存在感や“最後の一振り”への期待が役割になっていました。
実際、
- 5月までに打率 .105 で登録抹消
- 7月に一軍再昇格も4試合出場のみ
- 最終的に17試合出場で引退を決断
という流れで、「バリバリ試合を決める長野」から「若手の背中を押しつつ、たまに代打で出てくる長野」へ完全に移行した1年でした。
6. 選手生活の「最大の出来事」と「最大のピンチ」
最大の出来事:2011年10月22日 代打逆転サヨナラ満塁本塁打
- 2011年10月22日、対横浜24回戦(東京ドーム)
- 1点ビハインドの9回裏無死満塁で代打登場
- 山口俊からライトスタンドへ代打逆転サヨナラ満塁本塁打
- この一打で
- 長野自身の首位打者タイトルが確定
- 勝利投手となった内海に18勝目=最多勝タイトル
- セ・リーグ通算1000本目の満塁本塁打
- 「スカパー!ドラマティック・サヨナラ賞」受賞
タイトル・歴史的記録・ドラマ性がすべて詰まった一打であり、プロ人生最大のハイライトと言っていい出来事。
(ドラフト2度拒否→3度目の指名で巨人入り、という“物語”全体ももちろん大きな出来事ですが、「一つの場面」を聞かれた場合はこのサヨナラ満塁弾が最有力です。)
最大のピンチ:2015年シーズンの大不振
- 2015年は打撃が絶不調でスタメン落ちも増加
- ボール球に手を出すことが増え、原辰徳監督(当時)から「視力検査を受けるように」と指示されたと報じられる
- 打率・安打・打点・出塁率・盗塁など多くの項目で自己ワースト
それまで「毎年.280前後+2桁本塁打」を続けていた選手が、突然キャリアワースト級のシーズンを送り、スタメンの座も揺らいだ年で、
「肉体的な衰えの兆候と、打撃スタイルの修正を迫られた分岐点」
と言える“最大のピンチ”でした。
この後、2016年にある程度立て直し、さらには丸佳浩のFA獲得の人的補償として、プロテクト漏れによる広島への移籍・再度の巨人復帰といった役割を変えながらキャリアを続けたことを考えると、2015年の不振を乗り越えたこと自体が、その後の長い現役生活の鍵になりました。
7. 現役通算の中で「技術が際立ち、勝利に直結した」打撃 5選
① 2011年4月12日 vs 東京ヤクルト(宇部)
- 試合:巨人 9 – 2 ヤクルト(公式戦1回戦)
- 球場:宇部(山口)
- 成績:5打数3安打5打点、7回に押本から3点本塁打
- 技術的ポイント:
- プロ入り後初の開幕スタメンで、「6番・中堅」。
- コースに逆らわずに打ちながら、勝負所でしっかりスタンドまで運ぶ広角+長打力を見せつけた試合。
- チームへのインパクト:
- 東日本大震災後の特別なシーズンの開幕戦での大爆発。
- 原監督が「生涯忘れられない試合」と語った一戦で、長野がその象徴になった。
② 2011年10月22日 vs 横浜(東京ドーム)
- 試合:巨人 5 – 2 横浜(24回戦・レギュラーシーズン最終戦)
- 球場:東京ドーム
- 成績:代打で1打数1安打4打点、サヨナラ満塁本塁打
- 技術的ポイント:
- 代打でいきなり無死満塁、1点ビハインドという極限のプレッシャー状況。
- 右投手・山口俊のボールを完璧に捉え、ライトスタンドへ弾丸ライナー。
- 内角寄りの速球を振り負けず、引き付けてライトに運ぶ「長野らしい」スイング。
- チームへのインパクト:
- 前述の通り、長野自身の首位打者&内海の最多勝を同時に決める歴史的一打。
参照:2011.10.22 長野久義 代打逆転サヨナラ満塁ホームラン 【巨人vs横浜 最終戦】
③ 2012年10月28日 日本シリーズ第2戦 vs 日本ハム(東京ドーム)
- 試合:巨人 1 – 0 日本ハム(日本シリーズ第2戦)
- 球場:東京ドーム
- 成績:初回、吉川光夫から先頭打者本塁打(試合唯一の得点)
- 技術的ポイント:
- 左腕エース吉川の立ち上がりを逃さず、初球から思い切りよく振りにいった結果の一発。
- 大舞台でも普段通りの積極性を貫くメンタル+一発で試合を決める長打力。
- チームへのインパクト:
- この1点を守り切り1–0で勝利。
- 「ポストシーズン全試合安打」の中でも象徴的な一打で、日本一への流れをぐっと手繰り寄せた。
④ 2013年8月29日 vs 阪神(東京ドーム)
- 試合:巨人 3x – 2 阪神(延長10回サヨナラ)
- 球場:東京ドーム
- 成績:5打数1安打1打点、10回裏先頭打者としてサヨナラ本塁打
- 技術的ポイント:
- 2–2の同点で、延長10回裏の先頭打者。
- 松田遼馬の2球目を完璧に捉え、左翼席へ弾丸ライナー。
- 「右投手の速球+変化球のコンビネーション」に強い長野の持ち味が最大限出た打席。
- チームへのインパクト:
- 優勝マジックを1つ減らすサヨナラ弾で、「スカパー!サヨナラ賞」受賞。
⑤ 2014年9月6日 vs 東京ヤクルト(明治神宮野球場)
- 試合:巨人 5 – 2 ヤクルト(18回戦)
- 球場:明治神宮野球場
- 成績:4打数1安打4打点、7回表に逆転満塁本塁打
- 技術的ポイント:
- 2点ビハインドの7回一死満塁。
- ヤクルト先発・石山泰稚のボールを左中間スタンドへ運ぶ逆転満塁弾。
- 外寄りの球を“おっつける”のではなく、しっかり引き付けてフルスイングする長野のパワーとタイミングの良さが光った一打。
- チームへのインパクト:
- この回の5点のうち4点を一振りで叩き出し、逆転勝利の決定打。
- 終盤の優勝争いの中での一発で、原巨人の“勝負強さ”の象徴的な試合の一つ。
「長野久義の打撃」を一言でまとめるなら、
“抜け目のないミート技術をベースに、ここぞで相手の決め球を仕留める勝負強さ”
この2つが合わさったからこそ、ドラフトの物語から2010年代の巨人黄金期、そして代打の切り札としての晩年まで、
長くファンとチームに愛された打者だったと結論づけられます。
参照:長野久義引退セレモニー 涙の花束贈呈【ジャイアンツファンフェスタ2025】
