目次
佐々木朗希の凄さ
- フォーシームの“伸び”×到達の速さ
純粋な球速だけでなく、回転の質とリリースの前(長いエクステンション)で、打者の手元で“浮いてくる”見え方を作れる。結果、高めゾーンで空振り・ポップを取りやすい。 - スプリットの決め球性能
直球と同じ腕の振りから、最後にストンと落ちる二段変化。見分けがつきにくい“トンネリング”が効いていて、空振りとゴロを同時に量産できる。 - 直球—スプリットの上下二軸で作る配球
初球やイーブンで高め直球(見せ球/ストライク)、追い込んで膝下スプリット。読みを外すために時折スライダーやカーブを挟み、球速帯と軌道の差で時間を奪う。 - 再現性の高いメカニクス
着地→骨盤→胸→腕の順序が安定し、出どころとリリース高さが一定。だからコマンドが生き、無駄な四球が少ない回を重ねやすい(コンディションが整った試合ほど顕著)。 - “最大失点”を抑える設計
高め直球で差し込み、低めスプリットで長打ゾーンを踏まない。被弾を最小化する設計思想が、先発でも終盤の救援でも強みになる。
佐々木朗希は連投に弱い?
「(1)試合内の“3巡目”での悪化」「(2)連投・長いイニングを避けた“短尺運用”で成績が改善」が、2025年の公開データから読み取れる傾向です。サンプルは小さめですが、数字はハッキリ出ています。
1) 試合内の“タイムスルーオーダー(TTO)”
ESPNのスプリット(2025)より、先発時の打者対戦順別の成績は——
- 1巡目:ERA 5.79(4回2/3)
- 2巡目:ERA 3.05(20回2/3)
- 3巡目:ERA 8.00(9回)
=3巡目で大きく悪化(被打率も.289)しやすい。サンプルは小さいものの、「続投でのパフォーマンス低下=試合内疲労」のシグナルとしては十分です。
2) 先発→救援の“短尺化”で改善
同スプリットで先発と救援を比較すると——
- 先発:ERA 4.38/12回1/3
- 救援:ERA 4.50(※RS内は小サンプル)だが、9月の復帰後(PS含む)は短い登板で無失点試合を量産。ポストシーズンでも抑え起用で支配的に投げています(10回2/3で1失点、0.84)。短いイニングに切ることで出力維持→結果が安定、という使われ方でした。
3) 月別の推移(“疲労→離脱→短尺復帰”の流れ)
- 4月:ERA 3.05(先発中心)
- 5月:ERA 8.00(失点増→その後離脱)
- 9月:救援で復帰し無失点登板を積み上げ(小サンプルだが内容は良好)。
=投球量が増える段階での悪化→休養・調整→短尺で再浮上というシーズン推移。
9月の復調の要因
「短尺(救援)化で出力と精度が戻り、配球を二軸に絞れた」ことが効いています。事実ベースで4点。
- 救援へのロール転換で球威が復活
9月復帰後はブルペン起用。最速101.4mphに達した試合が報じられ、復帰直後から無失点リリーフを重ねました(高レバレッジ継続起用の方針も明言)。=“短い回×全力”で直球・スプリットの威力が戻った。 - メカ調整で見え方が改善
復帰前の投球ディレクターとの面談・修正でフォームを微調整し、「別人のようだ」と指揮官が評する仕上がりに。リリースや姿勢が整い、球速とキレが回復したのが転機でした。 - 配球の“二択化”で決め球が機能
高めフォーシームで見せ→膝下スプリットで仕留める、の二軸に整理。ポストシーズンでも100mph級直球+鋭く落ちるスプリットがクローザー運用で刺さり、支配的な内容に。 - 投球回の管理=TTO(打者3巡目)回避
先発期に露呈した巡目が進むと悪化する傾向を、救援化で構造的に回避。1~2イニングに限定されたことで、コマンドの粗さや球威落ちが表面化しにくくなりました。
要するに、肩の回復+メカの再調整を土台に、短い回で“上(直球)と下(スプリット)”に絞ったのが改善の核心です。現状の最適解は「救援での二軸特化」。先発に戻すなら、球威維持とコマンドをどう9イニング設計に拡張するかが次のテーマになります。
来季の起用法
結論から言うと――中長期(来季以降)は“先発”回帰が本線、ただし短期(この秋〜来春の入り口)は救援(主に高レバ)併用が濃厚です。根拠を「本人の志向/首脳陣の方針/実績」の3点で整理します。
1) 本人の志向
- 9月復帰時は救援転向に“最初は消極的(ためらい)→徐々に受容”という経緯。=本音は先発志向が強いと読めます。
2) 首脳陣の方針
- ロバーツ監督は復帰直後から「ブルペンでの起用に前向き」「ポストシーズンは高レバで使う」と明言。実際、クローザーの第一候補/高レバ担当として位置づけました。
- ただし、シーズン前〜春はローテ投手として育てるプランを示しており(開幕前の報道・球団方針)、“基本線は先発育成”という文脈は維持。
3) 実績(2025年の現実)
- 先発期は8先発でERA4点台・四球多め→右肩インピンジメントで離脱。
- 9月復帰後はブルペンで球威復活(100mph超)→PSでクローザー格として躍動。連続セーブや“初の2セーブがいきなりPS”の史上例など、短尺で明確にハマりました。
総合見立て
- 短期:肩のケアを優先し、“高レバ救援”を織り交ぜつつの段階的ビルドアップ。監督も使い詰めを避ける方針を示しており、当面は救援適性を活かしながら稼働させるはず。
- 中長期:年齢・素材価値(先発価値の大きさ)・球団の当初計画を踏まえ、健康が戻れば先発に回帰が既定路線。オフ〜春でイニング増/コマンド再構築が進めば、ローテ入りを“先発優先+救援保険”のハイブリッドでスタートする公算が高いです。
今後の課題
端的に言うと、「耐久×コマンド×引き出し」です。具体的な課題と“目標値”をセットで挙げます。
1) 耐久(健康と出力維持)
- 課題:登板を重ねると球威・キレが落ちやすい、試合内3巡目のパフォーマンス低下。
- 目標:年間140–160回→翌年180回へ。1登板あたり95–105球でQS率55%超。
- 施策:オフの肩周り“後方筋群”強化(下部僧帽・前鋸筋)、登板間48–72hの軽負荷プライオ+スローで“縦振り”維持、中8〜9日→中6日への段階移行プラン。
2) コマンド(四球・高さ管理)
- 課題:ボール先行や“甘い高め直球”が失点に直結。
- 目標:BB/9 2.8以下、初球ストライク率62%↑、ボール先行(2-0)頻度 <10%。
- 施策:9分割ターゲットで「外低め→外低ボール」の2球セット反復、3球シナリオ(上見せ→下で決める)をテンプレ化。
3) 三巡目対策(TTO)
- 課題:同一打者3度目に被打が悪化。
- 目標:3巡目の被OPSを2巡目±0.050以内。
- 施策:球速帯の“別解”を準備(例:3巡目は“入れるスプリット”増/カッターを5–8%だけ混ぜる/カーブで速度差を作る)。
4) 第三球種の機能性(直球×スプリットの橋渡し)
- 課題:二択(上=直球/下=スプリット)が読まれる局面。
- 目標:カーブorカッターのCSW 28%↑、初球スト取得率50%↑。
- 施策:“入れるカーブ”でストを拾い、“逃げるカッター”で芯外し。配分は合計10–15%から。
5) 左打者への再現性
- 課題:外スプリット待ちに対する対応。
- 目標:対左のxwOBAを.290未満。
- 施策:外高め直球の見せ球質を上げ、バックドア系(カッター/スライダー)を5%だけ追加→外低スプリットの落差を最大化。
6) 走者対応(クイック・牽制・二次リード抑止)
- 課題:四球→盗塁でビッグイニング化の芽。
- 目標:被盗塁成功率75%未満、投球間隔平均15.0秒前後。
- 施策:タイムバリエーション3種(クイック1.25s/通常1.35s/ポーズ1.55s)、セット時の視線配分ドリル。
7) 守備とバント処理
- 課題:フィールディングの小さな乱れが失点期待値を押し上げる。
- 目標:守備DRS±0、送球エラー0。
- 施策:バント処理“3方向×同数ステップ”の反復、送球は胸から内旋→親指下の短距離フォーム固定。
参照:【佐々木朗希 回またぎで6アウト1奪三振の見事なピッチング!】フィリーズvsドジャース MLB2025 ディビジョンシリーズ第4戦 10.10
