大谷翔平の盗塁/走塁の「技術的に凄いところ」は、単に“足が速い”よりも 「勝てる条件を作ってから走る」精度にあります。実際、Statcastのスプリントスピード(最高到達速度)は2024年で 28.1ft/s(リーグ順位は中〜上位層)ですが、それでも盗塁数を大きく伸ばしています。
つまり武器は スピード×情報処理×フォーム最適化 の掛け算です。
目次
1) 「走る前」:投手の“癖”をほどく観察力と準備
盗塁はスタートの0.1秒が命で、ここが一番“技術”が出ます。
- セットの静止時間(止まり具合)、視線、肩・肘の入り、つま先の向きなどから「投げる/牽制する」を事前に絞る
- カウント、配球傾向、捕手の送球しやすい球種(速球系が来やすい等)も含めて、「いま走ると得」な状況だけを選ぶ
- 2024年は「最初は慎重→途中から一気に積極化」して盗塁が爆発した、と一塁コーチらが語っています(“安全に行ける時だけ行く”感覚が洗練された)。
2) リードと“間合い”:MLB新ルールを最大活用できる設計
2023年以降のMLBは
- 牽制・プレート外し(disengagement)が1打者につき原則2回まで
- 塁が大きくなり、塁間がわずかに短縮
などで、盗塁が増えやすい環境になりました。
大谷の上手さは、ここを「知ってる」ではなく「プレー設計に落とす」ところで、
- 2回牽制させた後にリードを“もう半歩”伸ばす(投手が3回目を投げにくい心理・ルールを利用)
- ピッチクロック環境だと、投手が“間”を作りにくいので、相手のリズムを固定化して読みやすくする(結果としてスタートが切りやすい)
…みたいに、「走る距離を短くする/迷いを減らす」方向へ期待値を積みます。
3) スタート技術:反応速度より“初速が出る形”
盗塁の成否は最高速より 0〜数歩の加速(初速) が支配的です。上手い走者ほど
- 重心を落としすぎず、一歩目から前に倒れる角度が作れている
- 一歩目が“真横”にならず、斜め前に切り込む(二塁方向へ最短の力の向き)
- 上体のブレが小さく、2〜3歩目でほぼ全力に近い加速に入る
大谷は体格が大きいのに、この「加速の形」が崩れにくいのが強みです(速い選手でも、立ち上がりが遅いと刺されます)。
4) 走路の効率:ベースに“点”で入らない
盗塁は「二塁に到達」ではなく「タッチを避けて塁上に残る」が目的なので、
- 送球位置を見て、ベースの手前でラインを微調整(捕手→二塁手の球筋に合わせる)
- ベースを“面”で使う:真正面に突っ込まず、外側/内側どちらで触るかを最終局面で決める
- 送球が逸れそうなら“オーバースライド”を避けて減速もできる(ここが「走塁IQ」)
この「最後の1m」が上手い選手ほど成功率が跳ねます。
5) スライディング:速さを落とさず、アウト要素だけ消す
大谷の盗塁が強いのは、スライディングが“派手”だからではなく 失敗要因を消すタイプな点。
- 送球がベース上に来るときは、手を伸ばし過ぎず“タッチされる面積”を小さく
- タグが来る側と逆側で触る(フック/リーチの使い分け)
- 体が大きい分、接地角度を間違えると減速・浮きが出ますが、そこを抑えている
6) いちばん凄い指標:成功率の高さ=「無理をしない強さ」
LA Timesは、2024年時点で大谷の盗塁成功率が 50盗塁以上の選手の歴代でも最上位級(93%台) と報じています。
これは「速いから」より “走る局面選択”と“スタート精度”が高いことの証拠です。
参照:【ドジャース 大谷翔平|54本塁打&59盗塁まとめ】移籍1年目にして球団の記録、メジャーの歴史を数々塗り替えた伝説のシーズン!史上初の快挙「54-59」をプレイバック
