ダルビッシュ有が2023年のWBCキャンプ中にトクサンTVの取材で見せたのが、「スライダー系だけで3種類投げ分ける」という世界でした。
この動画では、実際にライパチさんに投げ込みながら、通常のスライダー/スラーブ/浮くスライダー(いわゆるスイーパー)についてかなり具体的に話しています。
参照:【独占】ダルビッシュ有投手…8種の変化球をライパチに投げ込む!投げ方まで本人解説!
ここでは、その内容を整理しつつ、「何が違うのか」「どう投げ分けているのか」をピッチャー目線でまとめていきます。ぜひ動画を参考にしつつ読んでみてください。
1. 通常のスライダー(横のスライダー)
まずベースになるのが、ダルビッシュが
「普通のスライダー」「横のスライダー」
と呼んでいた球です。
動画の中でも、ほかの2種類とあわせて
「普通のスライダー、ちょっと斜めのスライダー、浮くスライダー全部同じです(握りは)」
と説明していました。
つまり握りはオーソドックスなスライダーで共通、違いは投げ方の方にあります。
通常スライダー自体は、
- 球速:ストレートより少し遅いくらい
- 変化:横成分がメインで、縦はそこまで大きくない
- 役割:カウントを取りつつ、芯を外してゴロ・ファウルを狙う“基準球”
という位置づけ。
この「基準の横スラ」を軸に、ここからスラーブや浮くスライダーへ広げていくイメージです。
2. スラーブ:カーブのイメージで出す大きなスライダー
2つ目が「スラーブ」。動画内では、
「スラーブはスライダーと同じ握りで“思いっきりカーブ”を投げるっていうイメージで出てくる」
と表現していました。
ダルビッシュが面白いのは、
- ツーシームと同じ回転軸から球種の違いを作る
- ツーシームが自然に横変化を生むイメージを、スラーブにも応用している
という考え方です。
まとめると、スラーブは
- フォーム・腕の振りはストレートと同じ
- 握りも通常スラとほぼ共通
- 回転軸の傾け方と指の通り道を変えて、「横+大きめの縦」変化を作る
という球。
用途としては、
- カウント有利で空振りを取りたいとき
- 横スラだけでは合わされそうな打者に、“もう一段深い曲がり”を見せたいとき
に使う、より決め球寄りのスライダーと言えます。
3. 浮くスライダー(スイーパー系):落ちないように見える横滑り
3つ目が、ダルビッシュが「浮くスライダー」と表現していた球。
日本の分析記事では、彼のこのボールをジャイロカッターやスイーパー系のスライダーとして紹介しているものもあります。
この球のイメージはざっくりいうと、
「真横に大きく滑りながら、あまり落ちないスライダー」
です。
スイーパーについての一般的な説明では、
- 真横方向への変化量が非常に大きい
- 通常のスライダーより縦に落ちにくいので、打者には“浮き上がる”ように見える
- 実際に上昇しているわけではなく、他の球に比べて落差が小さいためそう錯覚する
といった特徴が指摘されています。
ダルビッシュが強調していたポイントはこのあたり:
- 「押し出してしまうと絶対曲がらない」
- 「なるべくボールの“後ろ側”に回っていけるように」
- 「変化を大きく出せる人は、ボールの裏に回るのが上手い」
その結果、
- ストレートよりは遅いが、
- 通常のスライダーより落ちず、
- プレートまで“フワッと浮き気味に横滑りする”軌道
になり、打者からはアンダースロー投手のスライダーのように、一度浮き上がってから横にスライドするように見えます。
2023年WBCで大谷翔平がトラウトを仕留めたスイーパーが話題になって以降、MLB全体でスイーパー系スライダーは一気にトレンド化しましたが、ダルビッシュの“浮くスライダー”もまさにその一派と言える球です。
4. 3種類に共通する「ダルビッシュ的」発想
この動画で一番おもしろいのは、
「球種の違いは“握りの違い”ではなく、“回転の作り方の違い”」
という哲学がはっきり見えるところです。
- 通常のスライダー
- スラーブ
- 浮くスライダー(スイーパー系)
これら3つについて、ダルビッシュは「握りは全部同じ」と明言しています。
そのうえで、
- ボールのどの面を、どの方向になでて抜くか
- どれだけボールの裏側に指を回り込ませられるか
- 押し出さずに“最後まで持つ”時間をどれくらい長く取れるか
といったミリ単位の調整で、
まったく別の軌道・変化量の球を作り分けているわけです。
ダルビッシュ自身、データと感覚の両方を使って延々と試行錯誤しながら、こうした球種を作ってきたと話しています。
この3種類のスライダーの話は、その“回転デザイン”の具体例として、かなり参考になる部分だと思います。
