今回は大谷翔平(ドジャース)が世界に広めたと言っても過言ではない魔球スイーパーについての解説回です。
こちらの動画では最新技術によって解明されてきたスイーパーの投げ方や有効的な使い方について解説しているのでその要約をしていきます。
参照:『解剖』スイーパーの理論と投げ方 大谷翔平と伊藤智仁のスライダーとの共通点
大谷翔平の代名詞にもなった「スイーパー」という球種を、データとメカニクスの両面から解説しています。特にポイントは
①スイーパーそのものの性質
②大谷のストレートとの相性
③縫い目(シーム)を使った投げ方の具体的なイメージ
の3つです。
1. スイーパーとはどんな球か
スイーパーは「沈まず、横に大きく曲がるスライダー系のボール」です。
従来のスライダーのようにストンと落ちず、ほぼ横方向メインの変化をします。
動画では一般的な定義として、
- 球速:おおむね128km/h以上
- 横変化:25cm以上曲がる
- 縦変化:少なくとも10cm以上“沈まない”(=落下が少ない)
という条件を挙げています。
空振り率やボール球へのスイング率はMLB平均と大差ありませんが、「強い打球を打たれにくい」という点が優秀で、打球速度の指標が平均より低く、結果としてポップフライが増え、ゴロが減り、被BABIPが下がる=打たれてもヒットになりにくい球種です。
大谷は、
- 沈まないスイーパー
- 落ちるスラーブ系スライダー
- カット気味の小さいスライダー
といった複数のスライダー系を投げ分け、カウントや場面で使い分けることで成績を向上させました。
2. 大谷のストレートとの関係
大谷のフォーシームは160km/hを超える剛速球ですが、
- 回転効率が特別高いわけではない
- 回転軸にジャイロ成分やサイドスピンが入りやすい
- きれいなバックスピンではなく、やや沈む軌道になりがち
という特徴があります。
一般に、
- 回転効率が低い投手ほど、スライダーの横変化が大きくなる傾向があり、
- そういう投手は「腕を外側にひねる(海外)」感覚に優れていて、ブレーキ系のボールを覚えやすい
と紹介されており、大谷もそのタイプ。
その「ストレートの欠点」を「スイーパーの投げやすさ」に転用できたことで、投球スタイルが完成しました。
3. 縫い目を使うスイーパーの仕組み(シームシフトウェイク)
近年はホークアイの導入により、「ボールの変化は回転だけじゃなく、縫い目による空気の乱れ(シームシフトウェイク)も大きく関わっている」と分かってきました。
- 縫い目のある部分 → 空気が乱れて、早くボールから剝がれる
- ツルっとした面 → 滑らかな気流が長くくっつく
この“気流の差”がボールを横や縦に動かす力になります。
ドジャースのブレイク・トレイネンは、
従来のスライダーから、ツーシームの握りに変えることで、横変化の非常に大きなスライダー(スイーパー系)にモデルチェンジしました。
つまり、ツーシームグリップ+縫い目の向きをうまく利用することで、同じような回転軸でも違う変化を生み出せる、という考え方です。
4. 具体的なスイーパーの投げ方のイメージ
ここからが一番知りたいところだと思うので、動画の内容を整理しながら、実際のイメージを言語化します。
4-1. 握り
- 基本はツーシームの握りを使う(縫い目が縦に2本並ぶようなグリップ)
- 縫い目にしっかり指をかけ、縫い目の「段差」を感じられる位置に人差し指・中指を置く
- リリース付近でその縫い目を“こする・切る”ことで、シームシフトウェイクを活かす
従来のスライダーのような“横向きの4シーム握り”ではなく、
あえてツーシームにする点が、スイーパーの特徴です。
4-2. 腕の出どころ・腕の振り
- 従来のスライダーより、腕をやや下から出すイメージ
- ただし、最近はフォームバレや肘への負担を減らすために、
「腕の位置はあまり変えず、リリース時に手首を寝かせることで調整する」アプローチも使われている
大谷やダルビッシュは、他の球種より腕の位置を少し下げてスイーパーを投げることがありましたが、
メジャーの打者にフォームで読まれないように、また故障リスクを減らすために、手首の使い方で差をつけるスタイルも増えています。
4-3. 力をかける方向と回転のイメージ
動画では、
ボールを4分割した場合、右投げ投手なら「右下」に力をかけ、
リリースでは「右下 → 左上」の斜め回転をかける
という説明がされています。
右投げを想定すると、
- ボールの“右下”側を後ろから押さえつつ、
- リリースで“右下から左上へ”切り上げるように、斜め回転をかける
イメージです。
これにより、横変化+少し浮き上がるような軌道(沈まない軌道)を作り出します。
4-4. 指先の使い方
- 中指にしっかり引っかけて、ボールの裏側を長く触るタイプ
- 最後に人差し指で“切る”感覚を強く意識するタイプ
どちらの感覚の投手も存在します。
たとえば、
- 動画では「伊藤大海投手」「前田健太投手」「川上憲伸投手」などの名前が出てきており、
彼らはカットボールやスライダーを「人差し指で切る」感覚で投げていると言われています。
共通しているのは、
- 腕を外から大回りさせず、
- うまく“海外の感覚”をアジャストしながらサイドスピンをかける
という点です。
4-5. 感覚的なまとめ(投げるときの意識例)
右投げ投手がスイーパーを投げるときのイメージを、感覚的にまとめると:
- ツーシームの縫い目にしっかり指をかける
- 普通のストレートより、ほんの少しだけ腕を下から or 手首を寝かせる
- ボールの右下を長く押さえたまま前に運び、
- リリースで右下から左上に向かって「横+少し上」に切る
- 中指・人差し指どちらを軸にするかは、自分の感覚が良い方を選ぶ
こんなイメージになります。
5. 実践への応用
動画の最後では、
- 回転軸と回転方向を理解し、
- 自分のストレートの回転の癖(回転効率・ジャイロ成分の有無など)を知ること
- そのうえで、自分にとって“順応しやすい変化球”を探すこと
が大事です。
スイーパーは「誰でも簡単に投げられる魔法の球」ではなく、
特に回転効率がそこまで高くない速球を持つ投手にとっては、
その“欠点”を“長所”に変えやすい球種だという位置づけです。
ざっくり言うと、
ツーシームの縫い目を使い、
ボールの右下を長く押さえつつ、
右下→左上に切り上げるように指と手首を使うことで、
「沈まず、大きく横に曲がる」スイーパーが生まれる
というのが、この動画が伝えたい“具体的な投げ方のエッセンス”です。
